ご訪問くださいましてありがとうございます。
あたかもドラクエブロガーの皆様に講釈を垂れるかのようなおこがましいタイトルを付けてしまいましたが、最近インする時間がない自分が提供できるネタはこういうものしかありませんので、大目に見てやってください。
さて、ブログをやっている方々にとって、著作権云々は一度くらいチラッと意識したことがあるのではないでしょうか。ドラクエでいうと、某漫画のキャラクターを利用したブロガーさんが、著作権的な理由でブログができなくなってしまったという話を聞いております(個人的に結構このブログは好きだったので残念ですが・・)。
つまり、ブロガーにとって著作権は、いつトラブルに巻き込まれるとも限らない切実な問題なわけです。そこで今回はドラクエをはじめとするブログをやっている人に、著作権法のことについてできるだけわかりやすく触れていきたいと思います。
ただ、著作権法一般の話になるとテーマが広がりすぎてしまうので、今回は著作権法と親告罪についてスポットをあててみましょう。一部の記事やコメントで、親告罪について誤った情報が流れているようなので、この機会に内容を整理してみようと思ったからです。
(ちなみに、他のドラクエブログ関連の著作権法についての記事は、以前に以下のようなものを作成していますので、よろしければ参考にしてみてください。)
1 親告罪って何?
⑴ 親告罪の意義
親告罪とは告訴権者(著作権法の場合にはとりあえず著作権者といっていいでしょう)の告訴(裁判ををしてほしい旨の意思表示をすること)がなければ、裁判所に訴えを起こすことができない罪のことをいいます。
一部のサイトで、親告罪とは告訴がなければ罪にならない犯罪のこと、という説明がありますが、厳密にはこれは誤りです。
親告罪をより正確に説明すると、犯罪は成立しているけど訴訟するためには告訴が必要な罪のことです。告訴はあくまで訴訟をするための要件であって、それがなくても犯罪自体は成立するんですね。
現時点(2018年6月時点)では、著作権の侵害行為は原則的に親告罪とされています。たとえば、あるブロガーがスクエニの著作権を侵害していたとしても、告訴権者であるスクエニが告訴をしない限り、裁判沙汰になって有罪判決をくらうということはないわけです。
⑵ 親告罪の趣旨
ではなぜ親告罪のような制度があるのでしょう。この点、巷ではいろいろな説明がありますが、僕なりに整理すると以下のような理由に落ち着きます。
① わざわざ裁判沙汰にするほどでもない軽微な事件の審理をできるだけ排除する
② 当事者間で解決した方が適切な事件がある
①の例でいうと刑法の器物損壊罪がこれにあたります。
例えば友人と喧嘩して頭に来たため、その友人の部屋にあったプラモデルを壊してしまった、という場合です。その後2人は仲直りをしてプラモデルを壊された人も怒っていなかったならば、わざわざ裁判所でその罪について審理する必要はないわけです。そんな些細なことで裁判をしていたら公費の無駄遣いともいえます。
ところがこれが親告罪でないとすると、こういった軽微な事件を第三者が勝手に裁判沙汰にしてしまい、裁判事務に混乱を来すおそれがあります。親告罪にはそういう不都合をなくすための働きがあるわけです。
②の例は、名誉棄損罪の場合がイメージしやすいかもしれません。
名誉棄損罪の事案では、裁判沙汰にしてしまうと事実の概要がおおっぴらにされてしまうため、被害者にとって二次被害となってしまうケースがあります。そのような事件についてまで告訴権者である被害者の意思を無視して公訴提起をするのはかえって不都合です。むしろ示談などの方法で当事者間で解決した方が穏当な解決になる場合が少なくありません。
2 著作権と親告罪
⑴ 著作権侵害のケースも親告罪の趣旨がなじむことが多い
例えば、スクエニに無断でドラクエのキャラクターを使った様々なグッズを販売したらスクエニの商品の売れ行きが落ちてしまう危険があります。著作権があることでスクエニは「ウチの著作物を勝手につかうな」と主張して自社の経済的利益を守ることができるのです。
こういう経済的利益に関する権利の場合、仮に権利侵害があったとしても著作権者にとって特に不利益を感じないならば、わざわざ裁判沙汰にする必要がない場合が多いです。
例えば、ブログでドラクエのキャラ画像を使ったとしても、その使用が悪質でない限りスクエニが経済的不利益を被ることは考えにくいです。むしろネット上で話題にしてくれた方が商品の宣伝になって好都合と考えるケースもあるかもしれません。
そのような場合に、第三者によりむやみに訴えを提起されるとかえって迷惑ですね。となると上記の①や②の趣旨から考えて、著作権侵害は親告罪としたほうがいいということになります。
⑵ 親告罪と画像等についての利用規約
このようにドラクエの場合、ブログなどで画像を利用することについて著作権侵害云々を裁判で争うことが適切でないケースが多いです。スクエニだって「うちの著作物を使ってブログ収入を得て怪しからん!」と、いちいち血眼になって怒っているとはちょっと考えにくいので、告訴することはほとんどないといっていいでしょう。
しかし上記で述べたように、親告罪における告訴はあくまで訴訟条件であり、告訴がなくても犯罪自体は成立してしまいます。したがってこのままだと、「ブロガーの画像掲載行為は犯罪だけど告訴しないで見逃してやっている」という状態なのです。
これではドラクエブロガーもばつが悪くて画像が使いづらいです。
それなら初めからスクエニや他のプレーヤーに迷惑にならない画像使用は認めてしまった方が手っ取り早い。現在の利用規約で画像使用が許可されているのはそういう理由があるはずです。
3 著作権侵害の非親告罪化について
このように著作権侵害行為については、原則的に親告罪という扱いをするのが現行法なんですが、数年前にTPPの影響により非親告罪化しようとする動きが活発化したことがあります。
その理由は、主に著作物の海賊版拡散などの重大な著作権侵害対策です。確かにこういった大規模な犯罪については著作権者の意思にかかわらず公訴提起した方が公益のためといえるのでしょうね。
とはいえ非親告罪化には反対の意見も根強いです。
著作権侵害といっても、重大なものから当事者の判断に任せていいような軽微なものまでさまざまです。特に著作権の場合、あまり厳格に禁止すると表現の自由が不当に制約されて表現者に不利益になることもあります(パロディなどで問題になりますね)。
そんなデリケートな著作権問題を当事者の意思にかかわらず裁判沙汰にしてしまうのは、訴訟の濫用などにつながってしまうおそれが無きにしも非ずというわけです。ネットの世界でもいわゆる通報マニアみたいなのがいますから、故ある指摘かもしれません。
このように非親告罪化の問題は一筋縄ではいきません。
ただ、この非親告罪化の動きについては、現在は実現一歩手前で止まっている状況です。トランプ政権になってアメリカがTPPに非協力的になった影響で、参加国の足並みがそろわなくなり、TPP実現の推進力が失われたからです。著作権侵害の非親告罪化もTPPの一環ですからこのままでは法改正ができないということなんでしょう。
とはいえ将来的には著作権侵害が非親告罪化する可能性の方が高いとおもわれます。著作権侵害に対する罰則も重くなっていますし、国際的に見ても著作権侵害は罰則重視の方向で動いているようですので。
4 さいごに
以上、著作権法と親告罪の関係について触れてきました。この話題は既に旬をすぎたテーマではありますが今後の著作権法の改正でまた話題になることもあるかもしれません。その際にはまたこのブログでも触れていければいいなと思っています。
さいごに著作権法そのものについて一言。
巷では著作権法を云々すると、すぐ著作権違反だ!などと難癖つける奴だというイメージがあるかもしれませんが、そうでもありません。実際、僕はパロディなどの著作物利用は結構広く認めるべきと考える立場です。
著作権者よりの立場に立つか、利用者よりの立場に立つか、というのはあくまでその人の意見であり、著作権法に関する知識は思考整理の道具にすぎません。したがって、著作権法をかじったからといってクレーマーになることは本来ないはずなんです。
もちろん著作権者の保護は大事ですが、むやみやたらに○○権違反だ!などというのはかえって著作権法のイメージを損なう不遜な行為だと思っているので、僕自身も気を付けたいと思っています。
「ドラクエと関係ない記事じゃねーか、通報すんぞ( ゚Д゚)」
こんなこといわれそうな記事になってしまいましたので、この辺でやめときます。
最後までお付き合いくださいましてありがとうございます<m(__)m>