今回は著作権ネタを少々。
著作権についてごちゃごちゃいうと、一部の人に反感を買うんですよね。そんなこと言うやつは細かいことにいちいちうるさいカタブツだ、というイメージがあるのかもしれません。
もちろん僕も、人様のアラさがしのためにむやみに著作権を云々するのは無粋だと思っています。
「そんなことを気にしてこのネタを使えるか、下郎めが!フハハハ!」
・・え~、コホン('ω')
分かる人にだけわかってもらえればよろしい。
とはいえ、そんな著作権法も自己防衛のために基本部分くらい知っておいても損はないと思いますよ。イメージで食わず嫌いになるのはもったいない。僕がドラクエを通して著作権をたまに取り上げるのも、そんな思いがあるからです。
そんなわけで、今回はドラクエNPCの行動についてごちゃごちゃうるさいことを言いましょうw
1 プリエラの行為の問題点
今回取り上げるのは、クエストNo.477「オンディアヌと魔法のペン」に出てくるプリエラの行為です。
この記事を書くために、ざわざわリプレイ('Д')
このクエストは、恋愛詩人ミハイルと妖精がかなわぬ恋におち、ミハイルはその恋を忘れるためにポエムを書き続けなくてはならない、というちょっと切ないストーリーなんですが、問題はそのミハイルの家の前にいるプリエラです。
このプリエラ、ポエムが書かれた紙くずを拾い集めて商売をしているというではありませんか。
2 プリエラの行為は違法!
著作権法を知らなくても何となく想像できるとは思いますが、もちろんこんなことは違法です。どうやらエテーネ王国では著作権という概念がないみたいですね。
ちなみに、今回の場面をもう少し著作権的に詳しく見てみると・・
・ポエムは小説の著作物(著作権法(以下同じ)10条①)にあたり、その著作権者ミハイルは、ポエムに関する著作権を専有(17条)
・したがって、プリエラの行為は、ミハイルさんの複製権やら頒布権やらの著作権侵害をしている
ということになります。
3 所有権と著作権の関係
もっとも今回、ミハイルはポエムを書いた紙切れを丸めて部屋の窓から投げ捨てています。そんなゴミを利用することも著作権侵害になるのでしょうか。
この点、人によっては一度捨てたものをどう利用しようが勝手だろ、とおもうかもしれませんね。しかし、結論からいうと、この場合でもプリエラのやっていることは著作権侵害になる可能性が高いです。
つまり、ミハイルがポエムの紙きれを捨てた行為は、紙きれの所有権を放棄しただけであり、ポエムの著作権を放棄したことにはならないのです。プリエラは紙くずの所有権を手に入れることはできても、ポエムの著作権までは手に入れられないわけですね。
ちなみに、著作権と所有権の関係については、以下のような判例があります。
「著作物の原作品は、それ自体有体物であるが、同時に無体物である美術の著作物を体現しているものというべきところ、所有権は有体物をその客体とする権利であるから、美術の著作物の原作品に対する所有権は、その有体物の面に対する排他的支配権能であるにとどまり、無体物である美術の著作物自体を直接排他的に支配する権能ではないと解するのが相当である。そして・・著作物に対する排他的支配権能は、著作物の保護期間内に限り、ひとり著作権者がこれを専有する」(最高裁昭和59年1月20日)
つまり、著作物が描かれた紙などの有体物の所有権をもっていても、それだけで著作権を手に入れたことにはならないよ、ということです。
このように所有権と著作権はあくまで別物として考える必要があります。
一見難しそうですが、実は言っていることは当たり前のことです。例えばドラクエのソフトの所有権を購入により手に入れても、ドラクエに含まれる著作権を手にいれることはできませんよね。それと同じようなことです。
4 プリエラが詩集を出すためには・・
以上のように、プリエラがミハイルの詩集を出したいと考えるならば、ミハイルと著作権について別途交渉しなくてはならないのです。
ちなみに、交渉の際には、著作権そのものを買い取るか、それとも単なる利用許諾を得るだけにするかを検討しなくてはいけません。
一般に、原稿料を支払うだけでは単なる利用許諾と解釈され、著作権そのものを得ることはできません。もしプリエラがいちいちミハイルに許可を取らずに自由に商売をしたいと思うなら、一般に原稿料より高い金を払って著作権を買い取る必要があるわけです。
どちらがプリエラにとっていい方法なのか・・?
現実社会では、このようにクエスト後の交渉の方が問題になるかもしれませんね。
本日もお付き合いいただいてありがとうございます<(_ _)>