※この記事はVer4.3のメインストーリーに関するネタバレを含みます。
ご訪問ありがとうございます。
今回は、以前ちょっと気になったジャ・クバ皇帝暗殺事件の事実認定について述べたいと思います。ちなみに「以前」というのは、この記事のことです。
皇帝暗殺事件では、マリッチの記録した暗殺現場の映像から、犯人がグルヤンラシュことクォードであることが確定されました。しかしその結論に至るまでにはある程度の論証が必要です。
というのも、マリッチの映像にはグルヤンラシュが皇帝を殺害する行為そのものが映し出されておらず、その前後の画像が断片的に映っているにすぎません。このままではリウ老師が言うように「誰の目から見ても明らか」というほどの証拠にはなりません。
そこで、現代の刑事訴訟実務の事実認定方法をヒントに、今回の証拠だけでグルヤンラシュを有罪にできるのか、少し詳しめに見ていくことにしましょう。
1 グルヤンラシュを有罪に対する「合理的な疑い」
グルヤンラシュを有罪にするには、「本当にこいつが殺したのか?」という疑いの根拠になるものを潰していかなくてはなりません。有罪判決には合理的な疑いをさしはさまないだけの心証が必要ですからね。
今回その「合理的な疑い」になり得る事実の一つが、グルヤンラシュの凶器です。
殺害直後と思われる映像にもかかわらず、刀に血が付いていません。
ドラクエは基本的に血をみせない方針のようですから仕方がないんですが、これでは有罪主張論者にとって不都合極まりない。事実認定の際には血痕の存在やその付着の様態が重要な要素になりますからね。
これによりこの画像の証明度はガクンと落ちます。
見ようによっては、皇帝が襲われて、それに気づいたグルヤンラシュが刀をもって護衛に来たと反論されるかもしれないです。もちろんこの考えでも、倒れた皇帝を見てこれを機に見殺しにしようとした罪くらいは問えるでしょうが、暗殺とはえらい違いです。
「殺害時に被害者の前で刀をもって突っ立っていう男が護衛なわけねーだろ」
と思われるかもしれませんが、そうとばかりも言えません。グルヤンラシュが写っている画像、本当に殺害時のものといえますか?
犯人は皇帝を襲う前に、皇帝の近くにいる01号機を攻撃しています。
そのせいで同機の画像は乱れ、グルヤンラッシュの映像が映し出される前にいったん画像が途切れてしまっています。
これでは解釈のしようによっては、グルヤンラシュが殺害行為からしばらく時間がたってからジャ・クバ皇帝の前に現れた、とも受け取られかねかねません。
そんな暗殺否定説に説得力があるかどうかはともかく、少なくともその疑問を潰すために、グルヤンラシュが有罪になるための状況証拠を積み上げていく必要があるわけです。
2 被害者ジャ・クバ皇帝の目線
では、有罪認定のための状況証拠にどんなものがあるでしょうか。
一つ考えられるのは、被害者が犯人を発見したときの状況です。ジャ・クバ皇帝が犯人を発見した時の表情から、それがグルヤンラシュであることが推認できればいいわけです。
ちなみにジャ・クバ皇帝の犯人発見時の表情はこちら
完全に警戒態勢です。この時点で犯人は凶器を持っているものと思われます。
そして、より重要なのは皇帝の目線です。上を向いていますね。犯人は皇帝よりも身長が高いことが分かります。
もし犯人がチビのビャン・ダオ君だったらこのような目線になるわけがありません。一方、グルヤンラシュは主人公のウエスタンよりも高身長。
となると、上記の画像で皇帝はグルヤンラシュを見ていると解釈するのが合理的ということになります。
3 犯行時の現場の状況
殺害現場をよく見てみると、椅子が転がっているなど若干荒れています。百戦錬磨の大国の皇帝が犯人を見ておとなしく殺されるとは思えませんから、おそらく何らかの抵抗をみせたはずです。
となると、犯人は殺害前に皇帝の側にあった01号機を蹴散らし、なおかつ多少の防衛行為をしたであろう皇帝を短時間のうちに抹殺したということになります。こんな芸当をちょっと歩いただけでヘトヘトになる柔弱児のビャン・ダオ(Ver.1サブストーリー参照)にできるわけがありません。
できるとしたら、軍団長を務めたような荒事が得意な奴でしょう。
4 警備体制の不備
これは裁判で使えない妄想レベルの推測なので、蛇足的な記述かもしれませんが、犯行前日の警備体制から、犯人がグルヤンラシュかも、と考えることも不可能ではありません。
上記のように、今回の暗殺は被害者の寝込みを襲ったものではなく、多少のもみ合いの末に遂行されたと推測するのが自然です。しかも皇帝は死ぬ前に「誰かおらぬか」とまで声を上げています。
それなのに、護衛の者が誰も来ません。
和平条約が調印される前日とはいえ、当時は大戦の真っただ中。
そんな緊張状態ならば、国王の部屋から物音ひとつしたらすっ飛んでくるくらいの護衛がなされてしかるべきです。このことから如何に当時の護衛体制が骨抜きになっているかが表れていますね。
これは犯人が暗殺遂行のために事前に準備した結果なのではないかと思われます。そして、そんなおおそれたことができるのは、その国でかなりの影響力を持っている人物のはずです。グルヤンラシュが犯行に絡んでいることの一つの間接的な証拠になり得ますね。
5 被害者の傷跡
事実認定の際この画像で悔やまれる点が、ジャ・クバ皇帝の殺傷痕が写っていないことです。被害者にどのような傷があるかが分かれば、今回の事件の真相解明にかなり役に立ちます。
つまり、グルヤンラシュが犯人だとすれば、凶器は長剣であることはほぼ間違いありません。それに対してビャン・ダオは短剣で暗殺したとされています。
一般に、長身のグルヤンラシュが長剣で背の低い被害者を襲うとき、腹部を刺突するのは難しいです。刀を振り下ろすような形で攻撃するほうが遥かにやりやすい。
それに対して、短剣の場合には、ほぼ刺突一択です。特に非力なものが相手の命を確実に奪うためには、急所である腹部付近を確実に狙わなくてはなりません。
そんなわけで、今回もジャ・クバ皇帝の殺傷痕が長剣を使ったものにふさわしいものであることが分かれば、よりグルヤンラシュを有罪に追い込みやすいんですけどね・・。
ところが、画像で皇帝の苦しみ方を見ていると、どうも腹部を刺されたような感じがするので、何とも煮え切らない思いです。
6 グルヤンラシュの「自白」
上記のように、今回の01号機ことマリッチの画像だけでは、グルヤンラシュが有罪であると断定するには今一つ決定力にかけます。上記の分析も、ビャン・ダオに比べればグルヤンラシュが犯人だろうくらいの論証にすぎず、第三者の犯行の可能性も含めると、完璧な有罪立証とまではいえません。
その意味で、事実をグルヤンラシュ本人から確かめるべく、研究棟崩落の際に彼を救命し、取り調べを試みたウルタ皇女の行為は、捜査方法の見地から極めて賢明です。すくなくとも稚拙な推測で主人公を有罪認定したドミネウス国王などより、遥かに優れた審判を行っています。
ウルタ皇女がグルヤンラシュに皇帝暗殺の真相を問うと、彼は自らの犯行であることを自白しました。この自白と前述のマリッチの画像の証明力が合わさって、ようやく彼が有罪かな、という感じがします。
ちなみに、刑事訴訟実務では、本人の自白というのは巷でいわれるほど証明の力は強くありません(検察官によると「Cランク証拠」扱いらしい)。少なくとも「本人がやったといっているんだから有罪でいいではないか」とはならないのです。
特に今回の場合、エテーネ王国復活の夢が途絶えて生きる気力をなくしているグルヤンラシュ、というかクォードは、質問に対して投げやりな返答しておらず、真摯な自白とはいえません。つまり、これ自体、証拠としてはあまり役に立たないのです。
本来であれば、もう少し信憑性のある自白を得るために、犯人本人しか知らないような事情を聴きだせば(「秘密の暴露」といいます)、より丁寧な取り調べになったんですが・・・、ゲームの演出上それは野暮というものかな?
7 まとめ
以上、Ver.4.3でグルヤンラシュを有罪にするための事実認定についてみてきました。
人によっては神経質すぎる検討に思えたかもしれませんね。
しかし、もしグルヤンラシュが無罪だったときのことを考えると、やはりこれくらい慎重にならざるを得ません。実際の裁判には正解の画像などありませんから。場合によっては、「ウルベアの英雄グルヤンラシュが、リウ老師の陰謀により皇帝暗殺の犯人に仕立て上げられた」なんてオチも想定しなくてはならないわけです。
グルヤンラシュが犯人であるという「正解」を一度取っ払って、改めてマリッチの画像を見てみると、有罪認定って、実は一部の人が思うほど単純なものではないというのが分かるのではないでしょうか。
それでは、また('◇')ゞ