これは、ある冒険者とその仲間スライムのおはなしです。
「この世界にいるぶちスライムって強いよな~」
「過酷な環境にさらすとスライムって強くなるのかぁ・・」
「へぇ~!イイネ!試しちゃおうかな~!」
「よぉ~し、スラ公!
今からお前を修行に連れていくぞ~!!」
「しゅ・・修行って何をすればいいの?」
「まずは何もしなくいい 生きるんだ。」
「えっ!?生きる?」
「そうだ、たった一匹でここで無事に生き抜いてみろ。」
「ここで生き延びてぶちスライムみたいに強くなったら、お前を迎えに来てやる。
それまでせいぜい修行に励んでいろ。」
「は・・はい!」
「よ~し、がんばって強くなってご主人さまに認めてもらうんだ!」
こうしてスライム一匹で荒野の中を暮らす生活が始まりました。
水分の多いスライムにとって、乾燥したこの地で暮らすのは過酷そのもの。
それでも、まばらに生える草木や乏しい雨露を頼りに、このスライムは必死に生き続けました。
しかし・・いつまでたっても自分が強くなっていく気配がありません。
そう、一人ぼっちで生きるだけでは強くなんてなれなかったのです。
この世界では、みんなと一緒に戦って様々な困難を乗り越えていくことで、はじめて本当の強さが身につきます。
幼いスライムには、そのことが分かりませんでした。
スライムは、来る日も来る日も主人が迎えにくるのを待っていました。
しかし、いつまでたっても主人はやってきません。
「・・自分が強くなっていないからだ」
スライムはそう思い込むようになっていきました。
このままじゃダメだ・・
やっぱり戦わなきゃ・・
スライムは、衰弱した体のまま強敵に立ち向かっていきました。
もちろん、ちゃんと育てられていないスライムが敵にかなうはずがありません。
スライムはさんざん打ちのめされてしまいました。
もうボク、くたびれた・・
うごけないよ・・
スライムはついに動かなくなりました。
体はどんどんしなびて小さくなっていきます。
ときおり降る雨がその体を潤しても、涙ですぐ流れ落ちてしまうのです。
それでもスライムは、薄れゆく意識の中でこう思っていました。
だいじょうぶ
ボクが死んでも、きっとご主人さまが見つけ出して生きかえらせてくれるよ・・
だからボクがここにいることは、ぜったいにわかってもらわなきゃ
「この体が朽ち果てても、自分の姿を見つけ出してほしい」
その強い思いは、いつしかスライムを一輪の花に変えていきました。
それは荒野に咲くとは思えないくらい鮮やかで人目を惹く花でした。
時は流れ・・
「この花」は、健気で忠誠心のあるスライムの象徴とされ、スライム系のモンスターに深く愛されるようになりました。
一方、某マンガの真似をして仲間モンスターを死なせてしまったような心無い冒険者がいたことに人々は強い憤りを覚えました。それからというもの、この世界にはモンスター酒場が整備され、仲間モンスターを厳重に管理するようになったのです。
そして同時に、冒険者の間では、仲間モンスターに鮮やかな花を纏わせることで、そのモンスターとの絆を約束するという風習もはじまったのでした。
これがスライムおしゃれ花のはじまりといわれておる。
お前も、仲間のスライムは大切にしなくてはいかんぞ!
本当ですか~!? それ?