*この記事では、ポイックリンやマスク・ド・ムーチョの正体など、おもにガタラの盗賊たちに関するネタバレを含みます
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現在、キャラクターズファイルでは、怪盗ポイックリンに関するクエストが展開されています。最近影が薄くなりつつあった盗賊ダルルなど懐かしいキャラにスポットが当たり、ガタラの町が少し活気づいてきた気がしますね。
今回は、そんな流れにあやかってドラクエⅩに登場する「義賊」に関するテーマを扱います。
そもそも義賊って何ぞや?
そんな視点からダルル達やポイックリン達に代表されるガタラの盗賊達を眺めてみましょう。
1 義賊の意義
義賊も結局のところ盗賊に違いないのですが、一般的な盗賊と区別した扱いをしようとはじめて「義賊」を積極的に定義したのはイギリスの歴史学者エリック・ボブズボームとされています(参考文献:weblio辞書)。
彼の定義によると、義賊といえるには次の2点を満たす必要があるようです。
① 権力者から見れば犯罪だが、民衆からは正義のイメージがあること
② 民衆と関わり合いがあること
この説によれば、①のみを満たす場合が広義の義賊、①と②両方を満たす場合が狭義の義賊とされています。
この定義については異論も多いのですが、まあ今の一般人の感覚と大体あっているのではないでしょうか。伝統的な学説ということもあるので、一応、以下では上記の定義を参考にガタラの盗賊達を見ていくことにします。
2 マスク・ド・ムーチョこそ本来の義賊
ボブスボームの考えによると、どうやら義賊と呼ばれるには民衆から正義と思われる盗みをしなくてはならないようです。
では、どんな盗みが正義(と思われる行為)なのかというと、フランスのフェルナン・ブローデルという学者がこんなことをいっています。
(強盗行為は)既成の国家が抱える公正でない政治に対する復讐であり、その権力側の正義が首尾一貫していないほど、盗賊らの活動は民衆から正義と看做される
つまり盗賊が民衆にとって「正義」と思われるには、悪政に対する民衆の不満がなくてはなりません。その不満を復讐してくれるからこそ正義といえるわけです。
この考えに一番なじむ「義賊」は、マスク・ド・ムーチョです。
彼は、ガタラの町長が民衆に不当な重税を課していたときに、その町長から財物を盗み貧しい人々にその富を再配分していました。ムーチョは重税を課す悪政に対して、盗みという手段で富の均衡を図ることで民衆に支持を得たわけですね。
ムーチョは妻の病死などの理由で盗賊の活動を「引退」してしまうのですが、その思想に共感してダルルらが義賊団を結成しているところを見ると、ムーチョの行為は相当数の民衆から支持を受けていたものと推測されます(もしムーチョを快く思わない者が多数派なら、彼の後継勢力にあたるダルルらが町の酒場でおおっぴらに活動なんかできないはず)。
3 今のガタラ事情と義賊ダルル達の立場
ではムーチョの後継者ともいえるダルルは、やはり「義賊」といえるのでしょうか。
これについては上記の「義賊」の定義からするとかなり怪しい点があります。
つまりガタラの町は、町長の重税事件があったことをきっかけに、町政を民衆の話し合いで決めるという形態に変わりました。
(ちなみにこれがダルルのコメント)
となるとダルル達は権力者という対抗勢力を失うわけですから、盗みにより民衆から正義とみなされるきっかけを失うことになります。このように考えると、ボブズボームの説によれば、ダルル達は「義賊」を名乗ることはかなり厳しいと解されます。
では、ダルル達が行っている盗みは何なのか?
ゲームの中で彼女らは、ウルベア地下遺跡から宝物を探し出しその富を貧困層に分け与えたり(盗賊の職業クエスト参照)、町民がモンスターに盗まれたものを奪いかえすといった役割を果たしています。
ウルベア地下遺跡の宝物が持ち主のいない無主物であると仮定すれば、前者の行為は貧困層のための慈善行為で、そもそも「盗み」ではありません(キラキラマラソンで拾ったものを売った金で寄付行為をするのと同様)。また、モンスターからものを奪い返すのも「盗み」というより財産被害の私的救済でしょう。
そうだとすると、ダルル達の行為は、義賊というよりも、警察や福祉に携わる私的行政団体としての色彩が強いと思われます。たまたま民衆から支持を得ている盗賊団が行っているので、結果的に「義賊」のような体裁になるだけで、ムーチョのような本来的な義賊とはやはり異なった性質の人たちといえます。
4 ポイックリンは義賊なのか?
では、そのムーチョの一番弟子であるポイックリンは義賊でしょうか?
そもそも彼女が悪に対抗するために盗みを行うシーンが(少なくともVer.1の段階では)思い浮かびません・・。
ポイックリンが行ったのは、養父であるダストンの命を脅かす品物(緑の石板)を破棄するために、彼の住居からその品物を盗み取ったにすぎません。
養父思いのいい娘さんですが、ダルル達のような公的な役割を果たしているとはいえないですね。これだけでは彼女に義賊を名乗るほど悪と対峙する意思があったとは言い難いです。
もちろんポイックリンはムーチョに弟子入りしたのですから、義賊を目指す意思が皆無であったとまではいえません。
実際、ドルワームのクエストの際、ポイックリンの正体であるチリは、ウラード国王から王族として戻ってくるよう申し出を受けますがこれを断っています。
これは見ようによっては、王族に戻るとポイックリンとしての活動がやりにくくなるためとも考えられます。こう考えると、彼女は盗賊としての活動にそれなりの使命感があったとも解釈し得るのです。
ただ、ポイックリンにそんな義侠心はないよ、という解釈も不可能ではありません。
ムーチョへの弟子入りだって、盗賊として情報収集能力や身体能力を訓練することが、ドルワームでの研究活動に有益であるために、彼を「利用した」ともいえます。実際、Ver.3.0におけるチリの活躍は、ムーチョからの指導が役に立っているはずです。
だからアンタのおかげじゃないっつーの
僕としては、ポイックリンことチリは、あくまで研究所の職員としても活動がメインで、ポイックリンとしての活動は「怪盗ごっこ」としての趣味的な側面が強いと思っています。あのとぼけたポイックリンのポーズを見ていると、この解釈の方がしっくりくるんですよ(異論は認める)。
その意味で、ポイックリンはぎちぎちに「義賊」の枠にはめない方がいいのではないかと思っています。
5 まとめ
ここまで義賊というフィルターを通して、マスク・ド・ムーチョ、ダルル、ポイックリンの3名を見てきました。
結論としては
マスク・ド・ムーチョ:真正義賊
ダルル:義賊っぽい私的行政団体員
ポイックリン:義賊の側面を持ちつつも怪盗ごっこの域を出ない女の子
という感じですかね。
もちろんこれは僕の妄想による人物評価なので、正解なわけではないでしょうが(今後のゲーム展開でこの解釈に変更が生じたら随時修正していきます)、少なくとも当面はこういう目で3名を見ることになりそうです。
今回は以上です。
ここまでご覧下さってありがとうございました<m(__)m>