アストルティア☆ゴールドブレンド

ドラクエⅩに関する雑記録~芳醇かつ軽薄なひとときをあなたに~

モーモンバザーの不正取引を本気で法的に考えてみる

※ウエスタン君は弟がいなくなって途方に暮れているので、今回は私(ブログ主)が記事をお届けします。

 

最近ゲームにログインすると、モーモンバザーで不正取引が行われていると注意喚起するメッセージが出てきます。

f:id:westernfield1101:20180125093504j:plain

僕自身、モーモンバザーを利用したことはないのですが、どうやら高額な商品の中に一つだけ廉価なものを紛れ込ませたり、一つあたりの値段と販売個数全ての値段を混同させるような表示をしたりして、不当に高い値段で商品を購入させる手口を使っているようですね。

 

このような事態に対して、運営側は利用者側に注意を呼び掛けているにすぎません。言い方は悪いですが、現時点では、この種の取引は自己責任で気を付けてやってね、というスタンスです。

 

では、もし現実社会でこんなことがなされたら、どうなるのでしょう。ちょっと日本の法律にのっとって考えてみましょう。

 

モーモンバザー詐欺というけれど・・

よく、巷のサイトではこの種の行為を「詐欺」と表現していますが、法的に見ると「詐欺」にはあたりません。「詐欺」を規定しているのは刑事系では刑法246条、民事系では民法96条です。

 

刑法246条1項 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

民法96条1項 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

 

ちなみに刑法は、刑罰を科すときに使われる規定であるのに対し、民法は当事者間の取引でトラブルがあったときに(主にお金で)解決するために使われる規定です。仮にモーモンバザーでいうと、こんな不正行為をした奴なんか逮捕して刑罰を科してやるべきではないか、と思うときには刑法の問題になり、こんな契約はなかったことにしたい、代金を返してほしい、と思うときには民法の問題になるというわけです。

 

では、条文を見てみましょう。上記2つの条文に規定されている「人を欺」く行為、及び「詐欺」とは、相手に不実の事実を告げて人を錯誤に陥れることをいいます。つまり、法的に詐欺をしたといえるためには、ウソの情報を告げているといえなくてはいけないんですよね。例えば、羽毛布団を不当に高額な値段で売りつけた、というだけでは詐欺にはなりません。それに対して、商品の説明をするときに、ホントは化学繊維の安物なのに、高級な羽毛を使っているといえば、「不実の事実」を告げているので詐欺になり得るわけです。

 

今回のモーモンバザーの件でみると、確かに、買主を勘違いさせるような紛らわしい販売の仕方をしているようですが、特に嘘の情報を流しているわけではないんですね。そんなわけで、売主は詐欺をしたとはいえないのです。

 

〇錯誤を理由に契約はなかったことにできる?

詐欺にならないとすると、上記の条文を理由に、売主をしょっ引いたり、代金を返せということはできません。では、今回の契約は勘違いだったからなかったことにしてくれ、ということはできないでしょうか。これを規定したのが民法95条です。

 

民法95条 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

 

この条文でいう「法律の要素」とは、契約の重要な部分、くらいの意味です。今回のモーモンバザーの場合、商品の代金や内容に関する錯誤なわけですから、「法律の要素」に関する錯誤といえそうです。そうだとすると、原則的に、買主は契約の無効を主張できることになります。

しかし、この錯誤無効は、表意者に重大な過失があったときには主張できません。モーモンバザーの買主が、商品の値段や内容を勘違いしたことに重大な落ち度があれば、契約はなかったことにしたい、とはいえないのです。

 

買主に、このような重過失があるかというと・・そのような過失があったといわれても仕方がないでしょうね。買主としては、画面を見て商品内容を吟味する時間が十分にあったわけですから、その吟味を怠って商品を買ってしまった点は、重大な落ち度といわれる可能性が高いです。

 

〇じゃあクーリングオフだ!

上記のような民法に基づく主張は、あくまで当事者間が対等な立場であることが前提です。お互いに似たような社会的立場・契約能力であるからこそ、当事者間同士の自己責任の考えが出てくるのであり、落ち度がある奴には無効主張は認めない、といったことも言えるのです。

 

では、一方が契約に長けた業者で、もう一方が契約に不慣れな一般人だったらどうでしょう。そんなときまで当事者間の自己責任の考えを貫いたら、悪い業者の思うつぼです。そこで特定商取引法では、民法上の錯誤にあたらない場合でも、一定限度で契約を解除できる旨の規定を設けています。これがクーリングオフです。

 

このようなクーリングオフの制度趣旨から、(対業者ではない)個人間の取引の場合には、クーリングオフの解除は認められません。モーモンバザーは基本的には対等なプレーヤー同士の取引ですから、クーリングオフはできないことになりますね。

 

しかし、もう少し理屈をこねて「中には反復継続してバザーをやっている業者のような

 プレーヤーもいるじゃないか。大体、こんな不正行為をやる奴なんて悪い意味で取引になれているんだから、業者と同等に扱うべきだ。」と考えるとどうでしょう。

 

結論からいうと、仮に今回のバザーを対業者間の取引と同視したとしても、クーリングオフは厳しいと思います。今回の契約はいわばインターネットの通販と同じです。特定商取引法では、インターネット通販の場合、原則としてクーリングオフを認めていないのです。インターネットの場合、買主が画面の前で冷静に契約内容を判断できるので、悪い業者に言葉巧みに言いくるめられるというケースはないだろう、という趣旨からです。

 

ただ、インターネット通販の場合、売主に返品特約(返品の有無及びその条件)を告知する義務があり、その告知を怠った場合、例外的にクーリングオフが認められます。モーモンバザーの場合、売主にこのような返品特約を要求するのは難しいかもしれませんが、それなら上記の例外規定と同様に、取引の解除を認めてもいいじゃないか、という意見も出てきそうです。

 

〇まとめ

以上のように、モーモンバザーの場合、日本の法律的に見ると刑法の適用はおろか、民法でも買主が保護されることは考えにくいです。特定商取引法に基づくクーリングオフでも、原則的には厳しいですが、今後このような悪徳商法が直らないようなら、アストルティアにおいてもクーリングオフ類似の制度を検討する余地があるのかもしれません(実現は難しいでしょうが)。