アストルティア☆ゴールドブレンド

ドラクエⅩに関する雑記録~芳醇かつ軽薄なひとときをあなたに~

DQX写真コンテスト開催!ついでに「写真」について著作権法に詳しくなってみよう!

ご訪問ありがとうございます。

 

さて、今年の8月にDQⅩ写真コンテストが開催されることになりましたね。

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僕はゲーム内で写真にそれほどこだわりがある方ではありません(このブログの淡白な画像を見ればよくわかると思いますがww)。しかしアストルティア界は相当写真に凝っている方がいるようです。そんな方はこのコンテストに相当意気込んでいるのではないでしょうか。

 

秀作を狙うためには情報収集をするかもしれません。

そんなとき、例えば誰かのブログでオーフィーヌの海を写したきれいな写真を発見したとします。その写真をそのまんまパクれば著作権侵害なのは当たり前ですので、そんなことをする人はいないでしょう。

 

でも、

「自分もこの海をとりたいな。でも真似だと思われたらいやだな。」

くらいに思うことはあるのではないでしょうか。

 

そんな迷いを解決するヒントとして、今回の著作権法の考えがお役に立てればと思う次第です。なお、この記事は著作権法の解釈の傾向・方針を紹介したもので、合法・違法についての「正解」を保証するものではありません。したがってこの記事により何らかの損害が生じても責任は負いかねますので、予めご了承ください

 

 

1 写真の著作権について

言うまでもありませんが、写真は著作物として著作権法により保護される対象です。

条文でいうと著作権法10条の8号ですね。

 

第10条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。

 (略)
8 写真の著作物

 

そしてその著作物を創作した人、つまり撮影者はその写真の著作権を専有するわけです。つまりその写真を誰かが真似したら、その撮影者は複製権などの著作権を侵害された、といえるわけです。
今回は、この複製権侵害の話に絞ってお話しましょう。
 

2 写真がどんなふうに似れば「複製」になるのか

⑴ まず「複製」の一般的な定義について

では複製権侵害といえるほどの「真似」とはどのようなものでしょうか。
これは「複製」の定義にかかわることですので、ちょっと判例を見てみましょう。
 
複製とは、「既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することを言う」(昭和53年9月7日最高裁第一小法廷)
 
依拠とは、その著作物を「真似よう」とすること。つまり偶然一致した場合は依拠したとはいえないので「複製」にはなりません
一方、判旨の後半部分「その内容・・・再製すること」って何のことかよくわかりませんね。要は「似てるな~」と思えるものを再び作ることということなんでしょうが、基準として抽象的すぎます。もう少し具体的に見てみましょうか。

⑵ 写真の「複製」が問題になった判例を見てみる

①「みずみずしいスイカ」事件
では、実際に写真の複製権侵害が争われた事件を見てみましょう。
「みずみずしいスイカ」事件という判例があります。以下の2つの写真が「真似してるんじゃないか?」と問題になった事件です(「引用」の範囲内で画像を使用しています)。
 

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まず裁判所が出した結論からいうと

第一審は「真似してない」

控訴審は「真似してる」

です。見解が分かれましたね。何故でしょう?

 

②どういうところが似れば著作権侵害になるの?

 著作権法は創作行為を保護するための法律ですから、写真の創作部分(つまりその人が創意工夫を凝らした部分)を似せなくては著作権侵害になりません。つまり対象を真正面から写しただけの創意工夫のない写真は、同じものが作られても「真似」と評価されづらいんです。

 

みずみずしいスイカ事件の第一審はこれに近い感覚で、この写真は「真似ではない」と著作権侵害を否定しました。つまり「切ったスイカを真正面から撮っただけじゃないか!切ったスイカを撮ったら誰でもこんな写真になるわい!」ということです。

 

この結論にした背景には、この程度で著作権侵害を認めては、誰も切ったスイカを撮影することができなくなるという考えがあります。この考え方は応用がきくので著作権法の世界ではよく使われます。

 

一方、控訴審は「いやいや、今回はただ切ったスイカじゃなくて,スイカの切り方や並べ方でみずみずしさが出るように創意工夫をしているじゃないか。これを似せられたら著作権侵害とみるべきでしょ。」という考えです。つまり被写体の設定の創意工夫を重視したんですね

 

このことから、第一審は写真の取り方のありきたりさに着目して著作権侵害を否定し、控訴審はその被写体の創意工夫を重視して著作権侵害を肯定したといえます。

 

以上のような判例の考えを参考にすると、写真については、アングル選択やフィルターの使い方などの写真の取り方、及び被写体の設定についてその人の創意工夫があるかをみて、その創意工夫を似せてしまうと複製権侵害などの著作権侵害が肯定されやすいという傾向にあることが分かります。

 

  

3 言ってることが難しいから例題で考えてみる

 以上の説明だけでは難解なんで、実際のアストルティアの世界を写した写真で考えてみましょう。

 

(例題1)(B)は(A)の撮影者の著作権を侵害しているといえるでしょうか

 (A)「不思議な岩」

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(B)「ジュレー島の奇妙な光景」

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ジュレー島のうずまき岩(っていうのかな?)を撮影したものですね。

確かにパッと見、2つは似ていますけど、前に述べたように創作部分が似ていなくては著作権侵害になりません。

 

では、その観点から考えてみましょう。

まず(A)はうずまき岩を普通に真正面から撮ったもので、写真の撮り方に創作性はありません。たしかにうずまき岩を題材にしている点は「真似」されていますが、「うずまき岩を題材にしよう」というのはアイディアであり創作ではありません。先ほどのスイカの例のように、被写体に何の創意工夫も施していないので、控訴審のように考えることもできません。

 

第一、こんな場合に著作権侵害を認めてしまうと、うずまき岩を題材にした写真を誰も撮れなくなってしまいます。

そんなことからすると、この例題では著作権侵害は否定される可能性が高いです。

 

 

(例題2)(B)は(A)の撮影者の著作権を侵害しているといえるでしょうか

 (A)「ビッグマリンスライムになろうとしたのに・・」

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(B)「いいおうち見つけた☆」

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う~・・我ながら自分には写真の才能がないな・・(´・ω・`)

さて、今回の(A)の写真は、貝の形をした岩とスライムを組み合わせて、巨大なマリンスライムを表すという点で被写体の選択・構成などに創意工夫をこらしています(ということにしておいてください・・)。

 

(B)の写真では、インスタント機能を使って夜でも映える画にする工夫をしたり、スライムの表情を変えていたりしますが、岩とスライムの組み合わせという創意工夫部分を真似しているため、例題1に比べると著作権侵害になる可能性が高いと思われます。

 

この場合に著作権侵害とならないようにするには、被写体とは別に、写真の取り方の面でよっぽど特徴的なことをしないと厳しいと思います。

 

4 まとめ

以上、判例を参考に写真の著作権侵害についてみてきました。

この考えによれば、前例を参考に写真を撮るとき気をつけることは

・その前例の被写体に創意工夫が施されているときは、アングルなどの「撮り方」を真似していなくても著作権侵害になりやすい

・被写体に創意工夫がない(景色などの自然物)ときは、アングルやフィルターの使い方など写真の取り方が似ないようにする

ということでしょうね。

 

もっとも、「これ真似したいな~」と思うような魅力的な写真は、一般に被写体の設定や写真の取り方に創意工夫を凝らしたものが多いので、似た写真を撮ると著作権侵害が認められやすいです。

 

冒頭で挙げたオーフィーヌの海の例でいうと、オーフィーヌの海を題材にするのは構わないけれど、全く同じ場所の風景を写すなら、写真の取り方によほど独自の創意工夫を凝らさないと著作権侵害の危険が高くなってしまいますね。

 

つまり「真似したい」と思う写真は、やっぱり「真似しづらい」のです。

ここまで著作権法を見ていってわかることは、そんな当たり前の常識だったります。

 

 こんな平凡な結論になって恐縮しつつ今回は終わります。

ここまでお付き合いくださってありがとうございます。