アストルティア☆ゴールドブレンド

ドラクエⅩに関する雑記録~芳醇かつ軽薄なひとときをあなたに~

ドラクエブログにおけるパクリ記事と著作権侵害

現在、ドラクエⅩは大型ヴァージョンアップをしたばかり。

ブログ界も記事の更新で盛り上がっています。

 

ブログのテーマが注目されるのはブロガーにとっては嬉しいことです。

しかし多くの人間が共通のテーマで記事を書くものですから、トラブルが起こりやすい時期でもあります。

 

中でも多いトラブルが「パクリ」疑惑。

今回は、「パクリ」について知的財産法の見地から検討してみましょう。

 

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著作権法の複製権侵害との関係

パクリと著作権法の「複製」って何が違うのでしょうか?

 

もちろん、「そんな違い常識だろ!」という人もいるでしょうが、「いわれてみれば、どうなんだろ・・?」という人もいると思いますので、僕なりに整理してみます。

 

1 パクリとは

一般にパクるとは、「物やアイデアを盗むこと。犯人を捕まえること。」(日本語俗語辞典)という意味です。ブログにおいては物や犯人云々は関係ないので、ここではアイディアを盗むという行為一般を指すといっていいでしょうね。

 

例えば、Ver.4.1アップデート直後は新素材調達が金策としておすすめ、みたいな記事を書いた場合、後でそれとそっくりそのまま同じテーマで書いた記事があったとしたら、「パクリ」じゃないの?といわれる危険があるわけです。

 

「アップデート直後は新素材で金策がよい記事を書こう」というのはアイディアであり、そのアイディアを真似したら「パクリ」の定義にあたり得るからですね。

 

2 著作権法上の「複製」とは

まず、条文を見てみましょう。

 

著作権法第2条の15 (複製)

 印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること(以下略)

 

これだけだと抽象的すぎますね。ちなみに判例はこの文言をどう解釈しているかというと・・

 

既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することをいう(昭和53年9月7日 最高裁第一小法廷)

 

つまり、複製は、①依拠性(マネしようとしていること)、及び②類似性(似たものを作ること)がある場合のことを指すといえます。

 

①依拠性について

①の依拠性の要件は、たまたま似たものを作ってしまった場合に著作権侵害はならないということを意味しています。あくまで真似をしようとする事実が必要なんですね。

 

①の要件を満たすかどうかは、両著作物ができた時間的前後関係や類似点の性質などから判断されます。

 

ドラクエブログを例にとると、金策にお勧めな新素材の記事Aがアップされたとして、その半日後全く同じ新素材を題材にした金策記事Bがアップされ、しかもその記事には全く同じ表現上の誤りがあったという場合、かなり①の要件を満たす疑いがあります。

 

金策に適した新素材は誰でも書こうとする内容なので、同じ新素材を扱った記事があったとしても、それほど依拠性の根拠にはなりません。たまたまテーマが同じになることは十分考えられますからね。

 

しかし、表現上の誤りがそっくりそのまま他人の記事と似るということは、ほとんど考えられません。誤りというのは偶然起るものだからです。そんなことが起こるのは、似せようとしたからなんじゃないの?と疑いますよね。

 

しかも、B記事は、A記事から半日の間隔を経てアップされています。半日もあれば、そっくりな記事を書く時間的余裕はあります

 

そのような理由から、①の依拠性が疑いが出てくるわけです。

 

上記の例から分かるように、「間違いが似る」というのは依拠性を肯定する有力な事実になります。ちなみに知的財産分野では、著作物を創作した場合、真似されたときに依拠性を主張しやすくするために、わざとデータのエラー等の間違いを仕込むという手法が使われることがあります。

 

②類似性について

複製というと、コピー機で行うようにそっくりそのままの物を作るというイメージがあるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。判例も言っているように、内容や形式が似ていればいいのです。

 

内容や形式が似ているかどうかは、判例によると「表現上の本質的な特徴を直接感得することができる」か否か、というちょっと難しい基準を使うのですが、これについては後述します。

 

3 何が違うの?

このように、パクリと著作権法上の複製権侵害は、真似しようとして似たものを作るという点で一見同じに見えます。

 

しかし、両者は以下のように異なるといえます(あくまで僕の整理の仕方ですが)。

 

「パクリ」はアイディアを対象にしたもの

上で記した定義にあるように、パクるとは、あくまでアイディア一般を対象にするものです。

 

アイディアそのものは著作権法上保護されません

 

例えば、Ver.4.1の新装備について紹介する記事を書こう、というのは1つのアイディアにすぎません。仮に、一度誰かが新装備についての記事を公開して、その後にその記事を参考にして同じテーマの記事を書いたとしても、著作権侵害ではないのです。

 

したがって、広い意味での「パクリ」行為は、著作権法上の問題にはなりません。

また、上記の例ならば、道義的に見ても問題はないでしょうね。新装備のテーマは広くみんなが論じるべきテーマで、独り占めするようなアイディアではないからです。

 

もっとも、アイディアの性質や参考の仕方によっては、道義上の問題が生じ得ることはいうまでもありません。例えば、その人特有のアイディアを借用ないし盗用して、似たような表現で記事を作成するような狭い意味の「パクリ」行為は、トラブルの元です。

 

特に、狭い意味の「パクリ」行為の場合、記事の表現方法まで似てしまうと、後述の著作権法上の問題も生じてしまう危険があります。

 

複製権侵害は表現行為と対象にしたもの

著作権法はあくまで著作物を保護するものなので、複製権侵害の対象は表現行為そのものです。

 

たとえば、

「メイヴ戦で新装備の耐性効果を検証してきましたよぉぉぉ(^O^)/!!!」

という記事があったと仮定します。

 

メイヴ戦で新装備の耐性効果を検証する記事を書くというのはアイディアです。したがって、同じように新装備の耐性効果を検証する記事を書いても著作権法上の問題はありません。

 

もちろん、検証対象は同じメイヴでなくてもいいのではないか、PT構成まで同じにする必要はないのではないか、などの問題が生じ得ますが、あくまで道義上の問題に過ぎません。

 

しかし、その検証を具体的に表現する 際に、その表現方法を似せると複製権侵害の問題になるのです。

 

例えば、メイヴ戦の画像の撮り方、画像の張り付け方、検証結果の具体的な描写の仕方、その他もろもろから判断して、「この記事、アレとそっくりじゃん。」という記事を作成すると、複製権侵害になり得るのです。

 

ちなみに、前述した判例の類似性に関する要件「表現上の本質的な特徴を直接感得することができる」かどうか、というのは、今の話を難しく言い換えただけです。

 

つまり、新装備の検証記事における表現上の本質的特徴は、画像の撮り方・張り付け方であったり、検証効果の描写の仕方であったりするわけです。それらの特徴を似せて「アレとそっくりじゃん」と感じさせる(直接感得させる)場合には、「類似性」があり、複製権侵害になり得るというわけです。

 

アイディアを法的保護しないわけ

 

最後に、アイディアの法的保護について一般論を少々。

 

これまでの例から分かるように、アイディアは抽象的・主観的な産物であり、基本的には個人に独占させるものではありません。

 

例えば、新素材の価格変動について記事を書くというアイディアそのものを法的に保護してしまうと、同じテーマを扱う記事が生まれなくなり、ブロガー間で切磋琢磨できなくなってしまいます。

 

このように、表現行為の自由競争を守るために、アイディアは法的に保護されないということができます。

 

ちなみに、アイディアそのものを守る法律といえば、特許法です。

ただ、発明品を特許法で守ってもらうには、産業利用可能性など難関な要件を乗り越え、特許料を払う必要があります。おまけに特許には期間制限もあります。つまり保護されるにはいくつものハードルがあるのです。

 

このような特許法の規定も、アイディアは簡単に保護しないという法の立場の表れといえるでしょう。

 

まとめ

 

以上のように、

・他人のブログのアイディアそのものは参考にしてもいい

・アイディア参考の仕方・表現の仕方によっては道義的及び著作法上の問題になる

著作権の複製権侵害が問題になるのは表現行為についてのみである

ということがいえます。

 

長い文章でしたが、最後までお付き合いくださってありがとうございました<m(__)m>